鴛鴦夫婦

 仲のいい夫婦のことを「オシドリ夫婦」と言いますが、オシドリがどんな鳥であるかは意外に知られていないようです。 オシドリは《がんかも科》の水鳥で、漢字で「鴛鴦」と書きます。 鴛(えん)はオス、鴦(おう)はメスのことで、雄雌が番(つがい)になって離れないことから、夫婦仲の睦まじいことのたとえとして使われます、中国の故事に『鴛鴦(えんおう)の契(ちぎ)り』というのがあります。 その昔、中国の戦国時代のこと。 宋の康王(こうおう)が、家来である韓憑(かんひょう)の美しい妻を権力で奪い取った。 韓憑は痛憤のあまり自殺するのだが、妻もまた、「夫と一緒に葬って欲しい」 という遺書を残して、後追い自殺した。 民衆は2人に深く同情したが、これに怒った康王は、2人の墓をわざと向かい合わせにつくり、「もし墓を1つに合わせられるなら、やってみるがよかろう」 と言い放ったのである。「そんなことができるわけがない」と見こしたうえでの嫌味であった。 ところがどうだ。 一晩で、たちまち梓(あずさ)の木がそれぞれの墓から生え出てきたではないか。 さらに10日ほどすると、2つの木は枝がつながり、根は1つにからまり合った。梓の木によって、ふたりの墓は2つに合わさったのである。 そして、この木の枝の上には、ひと番(つがい)オシドリが棲みつき、1日じゅう悲しげに鳴いたそうだ。 掛け軸では背景に松、竹、梅が描かれます。